一般社団法人猟協

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R4年度農林水産省ジビエ広域搬入モデル実証支援事業

R4年度農林水産省ジビエ広域搬入モデル実証支援事業

鳥獣による農林水産業等に係る被害については、鳥獣の生息分布域の拡大、農山漁村における過疎化や高齢化の進展による耕作放棄地の増加等に伴い、中山間地域等を中心に全国的に深刻化しています。また、鳥獣による農林水産業等に係る被害は、農林漁業者の経営意欲の低下等を通じて、耕作放棄地の増加等をもたらし、こ れが更なる被害を招く悪循環を生じさせています。鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律では、国は、捕獲等鳥獣の当該施設への搬 入に必要な設備及び資材の整備充実、鳥獣の食品としての利用等その有効利用の促 進を図るため、需要の開拓の取組等に対する支援等の措置を講ずるものとされています。
このため、「ジビエ広域搬入モデル実証支援事業」は、この一環として、捕獲鳥獣の処理加工施設への搬入を推進するため、捕獲現場の地理的条件等に合わせた新たな搬入機器等の開発・改良及び実証等 を行う取組を支援するものです。

今回、ジビエカー(簡易移動解体車)とは別に以下の実証実験を行いたいと考えています。
狭路や急傾斜地等の捕獲現場から処理加工施設への搬入を行うため、軽トラック(軽自動車区分に該当する小型トラック)又は保冷車に巻き上げ機(ウィンチ)等を 実装し、既存の処理加工施設との連携の下、車両の機能や処理加工施設に搬入し た食肉の品質評価等の実証・展示等を行いたいと考え公募を実施しました。
そこで猟師工房の経営母体である(株)TSJさんを中心として奈良県宇陀市•三重県名張市•奈良県東吉野村及び自動車販売会社•自動車板金会社で構成するコンソーシアム「奥大和ジビエ利活用促進協議会」からの応募が評価委員会で評価され選定されましたので、事業実施をお願いします。

捕獲事業者と自動車販売会社、車両板金会社、3行政と力を合わせてジビエ利活用率向上に向けた貢献ができるよう良い製品(車両)を作成します!
「コンソーシアム構成会員と役割」
株式会社TSJ(猟師工房) 仲村篤志 原田祐介
•捕獲作業、食肉処理及び事業トータルコーディネート
ピーチトレーディング株式会社 宮島裕輔
•車両手配及び架装設計等
有限会社コーワ•コーポレーション 稲岡邦章
•車両塗装
奈良県宇陀市
•捕獲調整及び処理施設提供
三重県名張市
•捕獲調整
奈良県東吉野村
•捕獲調整及び監査役

ほとんどのメンバーは捕獲やジビエ利活用に精通する猟師で構成されており、事業的専門性と狩猟の知識を持ち合わせたハイブリッド集団となっており多角的な視点から事業実施が可能です。

コンソーシアム設立総会の様子

まずは、どのようなコンセプトでどのような仕様の車両にするのかをそれぞれの視点から検討していきましょう。

まずは、搬送時の(個体)温度をできるだけ下げる事が最優先なんじゃないかな?ほら、昔から猟師は捕獲した個体を沢の水に漬けて冷やすじゃない?でも、山の水って必ずしも衛生的とは断言できないし、実際細菌類が存在することによる食品事故も起こっているよね。この状況を人工的に作る事ができれば利活用率も上がるのではないかな?

確かにそうですね。「きっちりと個体を冷却して運搬できること」これはコンセプトの1つにしましょう。

行政としての立場からですが、中山間地域における有害鳥獣捕獲従事者の高齢化が進んでいて、実際に捕獲しても高齢者には重労働となってしまい、捕獲個体を搬出することが出来ずにジビエとして利活用せず、廃棄してしまっている事も利活用を阻害している一つの問題ですね。

なるほど。「誰しもが、捕獲個体をスムーズに効率よく運搬(トラックへの積み込み)ができる事」これもコンセプトの1つとして必要ですね。

解体施設を保有していない名張市としては、隣接する宇陀市や猟師工房さんとの連携は必須ですが、ジビエガイドラインに規定される屠殺から施設搬入までの時間制限が地形や距離的な関係から捕獲個体利活用の阻害要因となっています。

たしかに食肉処理施設を中心とした一定の距離でのみ、捕獲個体の利活用ができていない事は全国的な課題と言えるでしょう。ジビエカーや簡易処理施設よりも「安価で既存の食肉処理施設事業者が将来車両導入が可能である現実的な車両」を目指さなければなりませんね。

車両関係のメンバーから何か意見はありますか?

効率的な冷却運搬という視点で言えば、保冷車というよりも冷凍車が理想的かもしれませんね。一般的に保冷車と言われる冷蔵温度帯やチルド温度帯での運搬では捕獲個体の腸内温度上昇を抑える事ができないかもしれませんし、移動時間も1時間から2時間強程度ですので荷室そのものを冷やす事に時間がかかってしまいますので、低温冷凍車を選択するのはいかがでしょうか。

実証実験実施時期は冬ですが、夏季における車両への太陽光照射による空間温度上昇は否めないと思います。そのため荷室の冷却に時間を要し、搬送個体の冷却を阻害する可能性がありますので遮熱塗料を用いて温度上昇を緩やかにすると共に、保冷効果を高めてはどうでしょうか。

これで運搬時、捕獲個体の温度上昇問題は解決しそうですね。スムーズな運搬に関して何か意見はありますか?

捕獲従事者の立場からですが、捕獲個体をトラックに積載する際にラダーなどを使用して積み込んでいますが、一人で積み込む際はとても苦労していますね。特に大きい個体などは心が折れそうになりますね。猟友会の方々はクレーンなどを搭載して積み込みをしている方もいますね。北海道の捕獲従事者の方は漁船用のロープ巻取り機などを活用されている方もいます。一番理想的なのは軽トラックベースの冷凍車にパワーゲートが搭載されていれば良いのですが、まず、パワーゲート装置を軽トラックに設置すると軸重が満たせず、最大積載量の減少という結果になってしまいほとんど個体が積載できないのですよね。

積載車の要領で床そのものをウインチにて引き込むような装置を特装してみますか。フロアーをスライドする機構を制作し積載時は荷室外にスロープのように突出し、スロープに個体を置いた状態で格納できるようになればご高齢の方でもリモコンボタン一つで積み込めますね。
それに追加機能として、万が一、車両が個体回収時にぬかるみなどでスタックしてしまった場合を想定して、ウインチ塩のものをリムーバルに取り外しができる仕様にしておけば更に付加価値が付くのではないでしょうか?

とても理想的な装置ですが、結構な価格しそうですよね•••

折りたたみスロープとウインチのみの廉価バージョンも作ってみてはどうでしょうか?

こんなイメージですかね?適切なスロープの角度なども試してみないとなりませんね。また、冷却ユニットが荷台下に設置されますので林道等へ侵入する際に擦過してしまい破損する事が懸念されますから、車高を少し上げたほうが良いかもしれませんね。

これはイメージ図であり、実際の車両とは異なります
車両装備検討会の様子

よし!この仕様で進めてみましょう。ジビエ利活用事業者の視点から搬送個体の品質評価は以下でどうですか?
①実証実験車両を使用して処理施設への搬入を2時間未満で行った個体(1時間程度とする)
②実証実験車両を使用して処理施設への搬入を2時間以上で行った個体
③実証実験車両を使用しないで処理施設への搬入を2時間未満で行った個体
④実証実験車両を使用しないで処理施設への搬入を2時間以上で行った個体
①〜④の個体を食肉処理し、外部機関へ検査に出しそれぞれの比較を実施し評価を考察してみてはどうでしょうか?

搬送に2時間以上かかる捕獲場所の選定は名張市と東吉野村で行いますね。

では、2時間以内の捕獲場所選定は宇陀市で実施します。

車両の検討会及び捕獲場所とスケジュール調整

方向性が決定しましたので、それぞれの役割でプロジェクトを進めていきたいと思います。それでは農林水産省の皆様、コンソーシアムの皆様、何卒よろしくお願いします。
尚、車両の展示会については後日ご案内しますが、令和6年2月下旬に奈良県宇陀市に最新鋭の獣肉処理施設が設立されますのでそのお披露目に合わせて展示予定。また3月中旬ごろに千葉県君津市にあるジビエに特化した施設「猟師工房ドライブイン」にて実施します。

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